カリフォルニアはハワイではない

翻訳業を営みながらサンフランシスコ、LA、日本を往復する日々の中で見つけた小さな発見をつづります。

アートショー>ダイブバー>二日酔い

気付けば前回の投稿から5カ月経過・・・。

三日坊主の本領発揮。

 

土曜日の夜は、San Anselmoのギャラリー開催のアートショーに顔を出す。

誘ってくれた友人達はギャラリーで面倒な人に出くわしたとかで

私が着く直前にSan Rafaelにある行きつけのダイブバーに移動で入れ違い。

せっかくなので赤ワインを飲みながら久々のアート鑑賞~。

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その後友人たちの待つダイブバー、Trevor's Pubに向かう。

Trevor's Pub

927 Tamalpais Ave, San Rafael, CA 94901

 

明日朝から仕事だから早めに切り上げるよ、と自分で言っておきながら、

Trevor'sに集まったのはスロベニア出身のシュペラ、その夫アメリカ人のポール、

ゲイのパティ―とスティーブ、ポールの友人ヒラリー。

今日もなかなか楽しい顔ぶれだ。

結局バー閉店までパティ―とおしゃべりに花咲かせる始末。

パティ―はなかなか見た目もいい男な上に、

Astrology(占星術)に精通していてブログも人気があるようだ。

12星座と13星座について意見を聞いてみたりして、

詳しく教えてくれたのだが飲みながらだったので正直あんまり覚えていない・・・。

帰宅2時過ぎ。翌朝日曜日はもちろん二日酔いのまま自宅勤務。

おなかが空いたのでチャイナタウンで調達した具材を使ってラーメンを作ることにした。

スープは創味シャンタンと味塩コショウ、醤油のみ。

具は平茸、オクラ、スナップエンドウ、空芯菜。

麺は雲吞麺。雲吞麺用の麺が存在するという事実は

正直中国人の同僚とつるむまで知らなかった。拉麺よりも細め。

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緑たくさん!

もう夜なのにまだ二日酔いで頭が痛いーーー。

Taxiという単語の意外な使い方

日本出張を終えてアメリカに戻ってから一週間後、

正確には6日後に再度出張で日曜日に成田入り。

あまりにも過酷なスケジュールで体調を崩し、

微熱と鼻水に悩まされながら冷えピタ3枚張りで会議に挑む。

ビデオゲームを作る会社っていうのはこういう緩さが大好きだ。

取引先の会社のスタッフが冷えピタを箱ごと持ってきてくれる。

レギンス、Tシャツ、パーカー、スリッパという

とても会議通訳者とは思えない格好でも全然OK。

微熱下がらぬまま4日の会議を終え、

日曜日には早くもアメリカへの帰路に就くことになったのだが、

ようやく熱が落ち着いたと思ったら、なんと出発当日の

日曜日の午前中に若干の気持ち悪さと腹痛、そして下痢までもが襲ってきた・・・。

これはまさかの・・・・食あたりではないのか。

自分のタイミングの悪さを呪いたくなる。

成田に出発するまであと数時間、まるで良くなる兆しなし。

藁にもすがる思いで、親からもらったいつ使用期限が切れたのかも分からないような正露丸を飲む。

しかもそんなときに限って機内真ん中席・・・・・。チーン。終わった。

せっかくANAで機内ウィスキーでも飲みながら帰るはずだったのに。

食べるとトイレに駆け込む可能性大な上に、

真ん中席だから通路側の人に何度も迷惑かけるのも気が引ける。

そんなわけで、結局水だけを少しずつ飲むだけで9時間過ごす羽目になった。

とりあえず眠れもしないので、行きの飛行機で終わりまで見れなかった映画、

「Spotlight(日本語のタイトルは「スポットライト 世紀のスクープ」。あと5日後に公開予定らしい)」を見終える。
カトリック司祭の性的虐待事件と、教会全体のそれを闇に葬ろうとする姿を描いた実話に基づいた映画。これはパワフル。映画そのものよりもその元になった実話がすごい。

次に、キウェテル・イジョフォー、ニコール・キッドマン、ジュリア・ロバーツ共演の「Secret in their eyes(日本語タイトルは「シークレット・アイズ」、6月公開予定)を見る。

13年前に起きた殺人事件の真相を突き止めようとするがそこから驚愕の真実が明かされていく、という物語。最後にかけてなーるほどねー、という展開。キウェテルとニコールの大人な関係もなかなか面白い。

そして1本半観てもまだフライト残り5時間も残っているという悲劇。

が、ANAはかなり映画やビデオのセレクションが多いので助かる。

その中で、TOEIC990点満点の関正生先生の
「世界一わかりやすいTOEICテストの授業」(確かこんな題名だったかと・・・)シリーズのビデオを見つける。

リーディング、ボキャブラリー、文法、などのセクションに分かれている。

英語を使う仕事をしていると、自分の英語の理解力を確かめると共に、

吸収できていないものは学ぼうという気持ちになる。

ビデオで使われていた問題は私にとっては容易なものが多かったが、

講座の中で関先生がおっしゃられていた言葉の成り立ちを考える、

言葉の意外な使い方、など興味深い部分もあった。

今度また機会があったらTOEIC受けてみようかな~。

そんなことを考えながらうとうとしていると、

ふと自分の座席の目の前に面白い単語を発見。

"Stow and latch handset during Taxi, Take off and Landing."

地上走行中及び離着陸時にはコントローラーを収納してください」

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Stowには「収納する、しまい込む」といった意味があるが、

それよりも面白かったのは「Taxi」という単語だ。

「During taxi」で「地上走行中」になるなんて知らなかった。

タクシーは乗り物のタクシーであって、それだけだと思っていた。

アルクによるとTaxiは自動詞、他動詞両刀の動詞であり、

taxi

【自動】
  1. 〔航空機が〕地上走行する、陸上をゆっくり進む
  2. タクシーで行く[運ばれる]
【他動】
  1. ~をタクシーで送る[運ぶ・連れて行く]
  2. 〔航空機に〕地上走行させる

 

だそうだ。

関先生のTOEICの授業ビデオで「Landing」という単語が
国際線のフライトでよく使われる、とちょうどおっしゃられていたが、

それよりもこの「Taxi」という身近な言葉の意外な使い道に

目から鱗な一瞬であった。

 

さて、パックも乾いたし、そろそろ早めの就寝としよう。

アフガニスタンの通訳者

今年は日本への出張が多く、毎月ペースで帰っている。

2週間の出張を終えた私は、疲れた身体と重いスーツケースを引きずりながら

サンフランシスコ国際空港(SFO)からUberで帰途につくことにした。

タクシー代わりに最近よく使用しているUber。

今日迎えに来てくれたドライバーは少々国籍不詳な見た目の青年だ。

SFOから自宅までは渋滞なしで40分はかかるため、

いつものように世間話や旅の話などをしながら

今時Uberの車では珍しいくらい古いカローラはフリーウェイを北に飛ばしていく。

どちらもアメリカ人には見えない私たちは、

自然の流れでどこの出身か、という話題になり、「当ててみて」と言うドライバー君。

南米出身といわれればそのようにも見えるがアクセントが少し違う。

アジアだというが東や東南アジア圏には見えない。

トルコ、ウズベキスタン、そのあたり?

「年がら年中、戦争が続いて銃声が響いている国だよ」と言われて

なんとなく頭の奥底で検討はついたのだけれど、

どういう罪悪感にかられてかズバリと言えず、

結局彼に正解を言ってもらうことになった。

「アフガニスタンだよ」

やはりそうか。アフガニスタンとアメリカはしばらく前から切っても切れない関係だ。

家族やアメリカに来た経緯や仕事のことをお互いに話していると、

「僕は数年前までアメリカ軍の下で翻訳者として働いていたんだよ」とドライバー君。

アメリカという国の国家機関がアメリカ国籍以外の人を翻訳や翻訳で雇うことは稀だ。

「それは珍しいね、文書とかを翻訳していたの?」と尋ねると

「違う違う。僕はアメリカ軍と一緒に戦場を回ってアフガニスタンで通訳していたんだよ。」とあっさり。

!!!!!!! なんと!!!!

翻訳・通訳という同じ職に携わりながらも

片や戦場通訳者、片やビデオゲームの通訳者とは。

自分の仕事を恥ずることは決してないが、

のほほんと毎日仕事している私にはとても頭が上がらない命懸けの仕事だ。

これまで翻訳者や通訳者にはそれなりに出会う機会があったが、

戦場の通訳者、しかもアフガニスタンの戦場でアメリカ軍のために通訳してきた

アフガニスタン人に会って話を聞く機会は後にも先にも一生ないだろう。

アフガニスタンで裕福とは言えない暮らしを送っていた彼は、

そこそこの報酬をもらえる(そりゃそうだ!)通訳の仕事に就く決心をしたそうだ。

ご両親はもちろん反対したそうだ。

「アメリカでは18歳にもなると実家を出るという風潮もあるようだけど、

僕の国は親が死ぬまで一緒だったり、少なくとも結婚とか大きな変化があるまでは

子供もずっと一緒に暮らすんだよ。」

だから、親元を離れるだけでなく、経済的な理由があるとはいえ、

命というリスクを負ってまで戦場に行くのは無茶だ、

というご両親の気持ちは痛いほどによく分かる気がする。

ともかく戦場通訳者としてアメリカに雇われた彼は、

アメリカ軍の兵士たちと一緒にアフガンのキャンプを転々と回ることになる。

「ぶっちゃけ、人が死んだりするのをそこで見たの?」と恐る恐る聞いてみると、

「もちろんさ。僕の目の前で兵士の手足が吹っ飛んでいったこともある。

何人もの人が傷つき、死んだ。アメリカ軍の兵士は若いやつが多くて、

みんな毎日泣いていたよ。精神が崩壊して発狂するやつも中にはいた。

その後アメリカに来て、この国の人がどんな暮らしぶりをしているのか見て、

なぜみんなあんなふうに泣いていたのかよく分かったよ。

アメリカにいるアメリカ人はみんな毎日いろんなストレスを抱えているけれど、

それは戦争が日々身近に起こっている国の国民が抱えるストレスとは

まるで別種のものだ。

それが突然あんな戦場に送り込まれて逃げることさえできない。」

その頃には私はすっかり彼の話に聞き入ってしまって、

まるで自分がジャーナリストであるかのように矢継に質問した。

古びたゴールド色のカローラはイースターの日曜日で少し混んでいるSFの市内を

ゆっくりとクルーズしていく。

彼の右頬には大きなあざがあったが、

それが戦場の痕跡なのかどうかはとうとう最後まで聞けなかった。

Train of Thought

母国語であっても他言語であっても

言語の学習には終わりというものがなく、

それが嬉しくもあり悲しくもある。


さて、会社である書面を翻訳していたところ、

今まで目にしたことがなかった新しい言い回しが出てきた。

”Act like you forgot what to say and lost your train of thought.”

(自分が言おうとしていたことや考えていたことを忘れてしまったかのように演技してください。)

 

Train of thought... 思考の列車... 

なんとも詩的で深みのある言い回し。

銀河鉄道999が頭に浮かんでくるのはなぜだろう。

 

疑問に思ったのはなぜ「train of thoughtS」というふうに

「THOUGHT」という名詞が複数形にならないのかという点だ。

頭でイメージしていたのは、

複数の車両でつながっているような列車の図だ。

その車両がここでいうところの「思考や考え」であり、

様々な思考が複数連なることで「思考の列車(脈略・つながり)」、

つまり「train of thoughtS」となるのではないかと思ったのだ。

 

アメリカ人の同僚に聞いてみたところ、

ここでの「thought」の使い方は、

1つ1つの考えや思考を指すのではなく、

概念としての「考えることそのもの」を指しているため

単数形が用いられているそうだ。

 

それを聞いてもなお、

自分の頭の中にはさまざまな「思考」の車両が無数につながっていて、

それが1本の列車となって絶えず脳内を走り回り、

時には車両が増えたり減ったり、

車両の中の乗客が下りたり乗ったりしている、

と考えた方が夢があるような気がするのは私だけだろうか。